軌跡

■ガッスールとの出会い

私たちは長年美容の仕事をしてきましたが、ヘナなどの天然素材で痛んだ髪が甦ることなどたくさん経験してきました。

私たちが美容に使える天然素材を探していることを知って、10数年来の日本に住むモロッコ人の友人がモロッコに昔から伝わる黒い石のせっけんがあると教えてくれました。

その後モロッコを訪れた時に市場で見つけた小さな石のかけら。
「これがせっけん?こんな石で顔や髪を洗うなんて・・・」と思いつい見過ごしてしまいました。

帰りの飛行機で隣り合わせたモロッコの人が、とても日本語が堪能で、黒い石の石けんの話をしてくれました。

それは石に見えるけど水に溶ける粘土で、泥状にして使うことや、昔から石けんやシャンプーのように使われていることなど教えてくれました。

ああ友人が教えてくれた石のせっけんのことだ。もしその人と隣り合わせることが無かったら、やりすごしたまま、その存在すら忘れてしまったでしょう。買ってくればよかったと悔やみました。

たまたま隣り合わせたモロッコの人がていねいに解説してくれたおかげでそしらぬ顔をして通り過ぎてきたあの黒い石に急に執着し始めました。

市場  黒い石

■ふたたびモロッコへ

帰国して後モロッコ大使館からの情報では、黒い石はガッスールと呼ばれているもので、それを扱う人や会社のことがわかりました。さっそくサンプルを送ってもらい、使ってみたところとても良い感じで、すばらしい素材と直感しました。

シャンプーなど工業製品が出回る以前は泥やふのりで髪を洗ったことがあると母から聞かされたことがあります。泥んこパックなども昔からある美容法です。

もっといろいろ試したくてモロッコの会社に連絡するのですが、アラビア語の人がいつも電話に出ます。その当時は興味があってアラビア語を勉強し始めていましたが、習いたてのアラビア語ではあいさつするのがやっとで閉口していました。これが最後と思い電話すると、たまたま電話に出たのが英語を話せる社長でした。

ガッスールを買いに行きたいと伝えると「日本からわざわざくるのか?」と驚いていましたが、1996年夏に電話番号を頼りに社長との約束の地モロッコ・フェズへ旅立ちました。

モロッコでは本当にいろいろな人たちとの出会いがあり、多くの助けに支えられました。詳しいことはまたの機会にお話できたらと思います。

なんとかフェズの町にたどり着き、ガッスールを扱う一族との出会いがありました。社長のお宅に滞在し、会社や工場の見学、一族の披露パーティーへの参加、運転手とガイドつきの世界遺産見物、一族の案内でその後思いがけなくガッスールの山まで訪れました。古都フェズを出ていくつかの町をすぎ、村を通り越して、松やヒマラヤ杉の生い茂る森を経て、山道をしばらく走りアトラスの丘陵地帯のふもとにあるガッスールの山にたどり着きました。

山の別荘でガッスールの話をたくさん聞きました。またガッスールの立抗から採集された化石の数々も見せてもらいました。海水や淡水に生息する生物や貝の化石がガッスールのなりたちを物語っているようでした。

立抗では12世紀より変わらぬ手掘りでガッスールが採掘されます。採りたてのガッスールは水分を含んでいて爪で傷つくほど柔らかくつややかなセピア色をしています。ガッスールは雲母の仲間なので何層にも何層にも重なりがあります。手掘りで採掘する時も剥がし取るような感じです。

採掘されたガッスールは水に溶かされ、不純物を取り除かれ、コンクリートテラスにまかれ、風と太陽で乾燥されます。出来上がったガッスールの小片は袋詰されて出荷されます。

モロッコ国内の市場では今でもガッスールのプレート状のものがそのまま売られ、昔ながらの方法で使用されています。

ガッスールとの再会が果たせると同時にガッスールのすべてを知らされました。

山1  山2

■ガッスール商品化へ

ガッスールはこのままでは頭皮や顔のパック剤としては最適だが、洗顔や洗髪をするには少々都合が悪い。そう思い、帰国後、私たちは石けんやシャンプーを手作りして身近な人たちに分けてあげていました。そのうち石けんやシャンプーがよかったから、売って欲しいという愛用者が少しずつ増えてきたのでなんとか商品化したいと思うようになりました。

さっそく薬事法という壁にぶち当たりました。

新規の化粧品原料が市民権を得るまでには試験や実験に膨大な費用と時間が掛かることがわかりました。医薬品機構にも足を運び色々と学ばされました。

皮膚科と産科の女医さんたちにパッチテストをしていただきました。

アトピー性皮膚炎の方を含む40名の方々にお願いしました。

その結果100%陰性で問題が無いばかりか、アトピー性皮膚炎の治療の補助剤としても有効という見解をいただきました。テストの結果が商品開発へのGOサインとなり、希望がもたされました。

モロッコ大使館の方のお勧めもあって、1998年国連ユ二ド日本モロッコ投資促進会議がモロッコで行われましたが、その会期中にユ二ド副所長の立会いのもとにガッスールの日本正規総代理店の契約をモロッコガッスール社との間で交わしました。

外国でのガッスールの使用状況は、ヨーロッパの数カ国とカナダでは既に製品化されておりました。

モンモリロナイトに属する粧配基として製品化を進めることにしました。

次なる壁は生菌数の問題でした。

山から掘り出されたガッスールはモロッコ国内で粗製されてはいるものの、生菌数が多く日本の化粧品基準にはとうていあてはまりません。色々な滅菌方法とテストを繰り返し、ガッスールにあった滅菌方法を見つけ出しました。2000年にはシャンプーと石けんを製作し、ギフトショウに出展しました。

2001年にはモロッコのガッスール社と共にドイツ・デュッセルドルフで原料メッセに出展しました。

現在では数社を経て、粘土に長年携わってこられた粘土専門家による独自の滅菌法でガッスールの滅菌を行っています。大学でスティーブンサイトの研究を行っている粘土学者の先生にガッスールの物性を調べてもらい、自前の分析表を作成しました。2001年4月から薬事法改正となり規制が緩和されました。

日本化粧品工業会にも原料名を“ガッスール”で申請しましたが、INCI名“モロッカンラバクレイ”に準じてということで“モロッコ溶岩クレイ”で承認されました。

ガッスールもエキゾティックな国の雑貨から化粧品または化粧品原料としての形がととのいました。現在は私たちのプロデュースしているD‐エクストラガッスール製品シリーズの他、数社からパック剤、石けん、シャンプー、入浴剤などガッスール製品が製造販売されております。